書いていきます
実験屋さんでは、一度作ったサンプルをあの手この手で調べ尽くすことがよくあります。
私も例外ではなく、初めての自前サンプル完成から1年ぐらい経つが、今でも現役だ。
この1年は測定もしたが実験工程の洗練を主にやっていた。
例えば、エッチング溶液を選定し濃度や温度、器具を整備したりだ。
実験屋にとってこれらの作業は極めて重要だ。
なぜなら実験屋の欲しい試料は理想的でなければならないからだ。つまり、ノイズや不純物の少ない良い特性を得る必要があるからです
現実の世界には、毅然とした物理があるが
実験設備には人的・物的要素がある。これらは通常(物理のような)理想的なものではなく、修正できない場合も多い。
そのような環境で、一定の質の試料を作るには常に工夫が必要だ。
例えばで、自分はこの1年で、以下のようなことをした。
新しいサンプルが出来上がるまで外部から製膜済のサンプルを買って
SMUや触針式プロファイラーを駆使して、その特性を評価し、手法にフィードバックし続ける。
その結果得られた改良例としては
- サンプルに触れるピンセットの先は、上向きになるように置く
- 何かの縁(ふち)にサンプルを追いやってからサンプルを掴むときは、ひっくり返らないよう地面側のピンセットを先にサンプルに触れさせてから掴む
- 消耗品(キムワイプ, 薬包紙, ダイアモンドチップ他)は、少しでも汚れだと思ったら捨てて新しいものを使う
- サンプルケースと有機溶剤の組み合わせによってはサンプル・ケース間で密着が起こり取れなくなるので、ケースからサンプルを取り出す際はピンセットの先を乾燥させておく
- 金属板にカプトンテープを貼りカッターで2mm角を切った後、フラックスを塗れば金属板の一部だけに半田付けをすることができる(一部わかりやすい表現に変えてます)
だろう。
これらの改良の積み重ねの結果、LEDの逆方向飽和電流を最大3桁低下させることができた。これは私の用途から考えると、大歓迎な結果だ。
…読者諸君には、「そんなもんかい1年やって」と思う人がいるかもと思うので、書いておくと
実際に、サンプルの前に座ってみれば分かる。これらの諸注意を、一つ残らず守ることはとても難しい。
周囲は騒がしいターボ分子ポンプやロータリーポンプだらけだし、同室で測定をしている研究室メンバーの作業音も不定期で鳴る。
さらには指導教官乱入イベント、とんでもなく重いクライオスタットの移動イベント、落としたらポンプ終了の極小マイナスネジの取り外しイベントなど。
サンプル以外に考えることが非常に多い。非常に。
ただこれは、自分がミスをする状況がどのような場合かを調べれば怖くはない。一方で就活の自己分析に近いことが必要になるため、なかなか労力がいる。
まー上にあげたものは今から使えるテクニックだし
すでにミスをしない状況がわかっている人には
【コンタミ激減!?】半導体デバイス実験テクニックまとめ!
みたいな記事が有用なのかもしれない。
書いてみようかしら。
主は思う。
あるとき、仕事において人間はフィルターだと気づいた。 インプット -> (人間) -> 成果 。
自分を評価する立場の人間は基本これしか興味が無いのかと気づいたとき、
何かが崩れる音がしたが論理的に正しいので受け入れることにした。
受け入れることにした。